翌日目が覚めると自分の部屋に寝かされていた。

季龍さんが運んでくれたのだろうか。…バカだ。本当に。寝ろと言われてご主人様に抱き締められて寝るなど使用人にあるまじき行為だ。

…はぁ、そろそろ本当に使用人失格にされそうです。

お父さんを助けるためにも、しっかりしなくちゃ…。頬を叩いて気合いを入れて朝の支度を始める。

いつものように台所に立つ頃には、やるべきことリストが頭に詰まっていた。それを1つずつこなしながらコーヒーを淹れ始めた。

「いい臭いですね」

『おはようございます、田部さん』

「おはようございます、琴音さん。いい朝ですね」

にっこり笑みを浮かべたのは源之助さんの身の回りを管理している田部さんだ。

こうして朝顔を会わせるのも久しぶりだったと思い出したけど、タブレットに打ち込んでいる余裕はなく、とりあえずコーヒーに集中した。

「やはり、琴音さんには敵いませんね」

「?」

どういう意味だろう。

用意したお盆ごと手にした田部さんが呟いた言葉に首を傾げる。