「はぁ?帰す気もねぇやつがなにほざいてんだ」

「っうるせぇ!!てめぇらだって、その女に情報横流しされてたんだぞ!!」

「あぁ。そんなこと。…ぜーんぶ、俺の作戦通りだけど?」

「ッ!!」

信洋さんは口角を上げるけどその目は全く笑っていない。

…そう、これは初めから計画されていた、信洋さんの作戦通りの結末。

*****

あの日、舛田に交渉を持ちかけられ、永塚組の組員が襲われた日。

信洋さんと2人きりになった台所で、舛田に交渉を持ちかけられたことを伝えた。

もちろん信洋さんは驚いて、その場では詳細は話せなかったけど、その日のうちにちゃんと話を聞いてくれた。

永塚組の情報を流す換わりに永塚組から自由にするという交渉の詳細を語ると、信洋さんは深いため息をついてしまった。

「ここちゃん、なんで俺に…俺だけに言っちゃったのさ…。そんなこと言われたら、俺は、利用するよ」

「…“はい”」

「…はぁ、若ならこんなことさせないで、ここちゃんの安全を第一にするのにさぁ…。ここちゃん、俺と取引、する?」

信洋さんはそう言って、私の前では見せたことがなかったはずの、永塚組の若頭側近の顔をした。