そうなのだ、ようやく美山の思いは成就した。
でも、笹口の告白は爆笑ものだったらしい。

『俺、美山のこと好き……なのか?』と何故か疑問形だったと、美山は天女のような微笑みを浮かべて教えてくれた。笹口らしい。

あれ以来、二人は目も当てられないほどラブラブだ、と言いたいところだが、今までと何ら変わりない。

ただ、笹口がちょっとだけウザくなった。嫉妬心が芽生え始めて、だと思う。

「パパが春太に謝っておいてって」
「何を?」
「今度のモデルは美山さんでいくそうよ」

前に言っていた『ハードボイルド系BLミステリー小説の主人公』のことだろう。

「あぁぁ! やっぱり話しているじゃないか!」
「言ってないよ。パパは眼力があるの!」

そうだった。小説家って意外に鋭かった、と母を思い浮かべる。

「担当さんから提案があってね、その主人公のイメージが『女神のしなやかさを持つ美しき悪魔』なの。そんなのいるかって切れていたんだけど……」

そりゃあ、切れて当然だ。

「でも、美山さんが……って知って、一気にイメージが膨らんだみたい」

人知れず、美山は世間様の役に立っているんだ……何となく、羨ましい。