眠たい王女様は夢うつつに現実をみるⅡ






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「るー!帰ろ〜」


シエルが後ろからぎゅっと抱きしめてくる。


「……ん。……じゃあ」


軽く後ろを一瞥する。


「るいちゃんばいばーい!」


「またなぁ〜」


「また明日ね」



「……うん」


帰ろうとした時だった。



「なぁ……琉衣」


ふいに夏目くんが声をかけてきた。


「……なに?夏目くん」



いつもムスッとしてるけど、


今日はどこか照れ隠しのように顔をしかめながら


夏目くんは言った。


「……その、なんつーか……


……仲間になったんだし、


そろそろ下の名前で呼んでも……いんじゃね?」


「……名前?」



思いもしなかった夏目くんの言葉にやや反応に困った。



「その、俺らはみんな

お前とシエルのこと下の名前で呼んでるし……」


むず痒そうな表情で視線は宙を泳いでる夏目くんをみて

立ち止まった私を少し離れたところで待っていた

シエルの頭に電球が光る。

とたん、にやにやと笑いながら、


私の方へ駆け寄り耳元で囁いた。


「つ〜ま〜り〜、るーに名前で呼んでほしいんだって〜」


なんだ、そんなこと?


「……葵。ばいばい」




……なんか、改めて言うとすっごい恥ずかしいかも。


「……!お!おう!またあ……」



がばっと顔を上げた夏目く……葵を見て、

私は何故か照れてしまって、


照れ隠しのように、私は……笑った。



「琉衣おまえ笑っ……」


「あああーーーー!るいちゃんが、笑ってる!!」


びっくりしたような葵を遮ったのは天野くんだった。


「……私だって笑うし」


「僕らの前ではちゃんと笑ってくれたことないじゃん」


「……まぁ」


「ふふふっ……今日はいいことありそうだ!」


「もう今日はほとんど終わったけどね〜」


にこにこと笑う天野くんに

シエルが冷めたようにツッコミをいれた。


「てゆうか俺もう帰りたいし、いいよね?


ね、るー、帰ろ!」


「……ん」


シエルが私の手を握った。


「じゃあるいちゃん!改めてばいばい!」


「ん、ばいばい。天のく……悠紀」


「うん!」


「えっ……」


「ぷっ……」



にこっと微笑む悠紀の後ろで、

葵が少し残念そうな顔をしていて、

その隣で井浦……じゃなくて祐が笑っていた。


……どうゆうことだか、よくわからないけど。


「俺だけ名前で呼んでくれるかと思っていたのに……


とか、思ってないよね?そーちょー?」


シエルがにやにやと葵に近寄って耳もとでこそっと囁いた。

内容はよく聞こえなかったけど、

どうやらシエルが言ったことは図星かなんかだったらしく

葵の顔がぼんっと一気に真っ赤になった。


「やーっだ〜葵くんったら真っ赤っか〜」


語尾に、草でも生えそうな勢いで

シエルがにやにやと笑ってる。


仕切り直しでもするように、


葵はわざとらしく咳をして少しぶっきらぼうに言った。



「ま、……また……明日な。るい」


「…うん、葵。またね」



夕焼けが私たちを照らす中、


葵は、赤く染まった頬で


切れ長の目を細めて綺麗に笑った。