これがーーー

年代順だろうか。
さまよわせる視線が、ある男性の肖像画でぴたりと止まった。

この方は、白髪混じりの黒髪? いえ、違うわ、きっとこの髪はヴィンターハルター家に伝わる複色の髪。

「ーーー父だ」

フロイラの視線をたどって、クラウスがつぶやく。

「似ておいでです」

端正な面差しは父親譲りのようだ。

「この御髪は・・・」

「父は、黒と銀髪の複色だった。一族の歴史の中でも、珍しい色だ」

銀髪ーーープラチナブロンド。

「それではこちらの女性がお母様なのですか?」

隣に飾られている、柔らかな微笑みを浮かべる黒髪の女性に視線を移す。

そうだ、とクラウスが軽くうなずく。

あら、と思う。クラウスの母の肖像が装幀されている額のすぐ横の壁面に、うっすら筋状の跡がついている。まるで以前そこに別の絵が架けられていたように。
ごくごく些細なことだけれど。