ロングギャラリー。その厚いオークの扉は普段ぴたりと閉ざされている。

フロイラが足を踏み入れたことはなく、その機会もなかった。
なにせ来客が訪れるということがないのだ。

その扉を、フロイラを連れてクラウスは押し開けた。
壁面から穹窿形の天井まで漆喰でひとつづきに仕上げられ、床はくすんだ大理石が敷かれている。
格調と優美さを保ちながら、そこに飾られる芸術品を引き立たせるための空間だ。

ロングギャラリーの名の通り、通路状のしつらえだ。
片面には窓が大きくとられ、片側にヴィンターハルター家が代々収集してきた美術品、骨董品、あるいは一族の肖像画が飾られている。

ゆっくり歩きながら、クラウスはフロイラにそう説明した。

途中で足を止めて壁面を見上げた。
広い壁に、肖像画、母と子を描いた絵、あるいは家族全員が描かれたもの、さまざまな人物画が飾られている。