どうして今まで気に留めなかったのかと思う。
クラウスのこと、ヴィンターハルター家のことだ。

環境の変化が急激すぎて、考える余裕もなかったのだろう。

舞踏会の日、初めて知った。
クラウスには家族がいないのだ。
クラウスについて知ること。ひょっとしてそれは、ルーシャにつながるかもしれない。

これだけの名門貴族となれば、当然あるべきは一族の肖像画だ。
邸のどこかに飾られているのだろうけど。無断で邸内を探し回るのもはばかられた。

「肖像画? なんでそんなものが見たいんだ」

結局クラウスに直接聞いてみたが、あまり機嫌はよくなさそうだった。

「あの・・・クラウス様はご両親を亡くされていると、舞踏会の時に聞きまして。ご両親はどんな方だったのかと・・・」

ロングギャラリーに飾ってある。とつと視線を外してクラウスは言った。