俺のそばから離れるな、とクラウスが耳打ちする。
「ーーー女よけだ」

その言葉に合点がゆく。
女嫌いのクラウスからすれば、令嬢たちに秋波を送られても、迷惑なだけだろう。フロイラを連れていれば、面倒が減らせる。

楽隊が優雅なワルツを奏でている。
男女がペアになり、輪になって踊り始める。

クラウスがすっと正面に回ると、手を差し出してきた。生真面目な表情だ。
「ーーーお手をどうぞ」

その手に、自分の手を重ねる。
導かれるまま、輪の中へ加わり踊り始める。

レッスンとは違う。やっぱり緊張する・・・

「なにも考えなくていい」
クラウスが顔を寄せてささやいてくる。

「俺だけ見てろ」

「・・・はい」