「それはそれは、出すぎた非礼をお許しください」
軽く胸に手を当てて頭を下げる。そんな気障っぽい仕草が身についている。

「しかし、どういったご縁で、令嬢は侯爵のもとへ? 失礼ながら、みな興味津々なもので」

「ーーー亡き両親の代ですが、ラインハート家とはちょっとした縁があったもので。
私も両親を早くに亡くしています。令嬢の境遇はとても他人事とは思えず、当家にお迎えした次第です」

初めて聞く話だった。

なんとお優しい、とリアネルが柳眉を下げる。

「私は今日はこの通り連れがいます。あなたのお声がけを待っている方たちを、これ以上壁の花にしていてはお気の毒だ」

そう言って、クラウスはフロイラの手を引き、踵を返す。
リアネルにあまり好意を持っていないのだと、彼の言動は雄弁に語る。