冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

言われた通り、目をつぶる。

なにか別のことを頭に浮かべようと努める。
あぁ、そうだ・・・蘇る感触と記憶。

幼いフロイラの手をこうして繋いで導いてくれたひとがいた。
その手は小さくてすべすべして、こんなに大きくも硬くもなかったけれど。

ーーーフロー、こっちよ、こっち。

風をはらんで膨らんだスカートの裾をひるがえし、自分の手を引いて駆けるうつくしい少女。
その華奢な手首には、チャームのついた銀のブレスレットがきらめいている。

思えばルーシャとはいつもこうしてくっついていた。手を繋いだり、髪を撫でてくれたり、ブランコを一緒にこいだり。

懐かしいな・・・