冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

「別にお前のためじゃない。嫌でも出てもらう」

「は、はい」
クラウスの言葉に、背筋に緊張が走る。

「俺は社交界と女嫌いで有名だからな。俺がお前を引き取ったことは、それなりに人の話題になっている。
お前が姿を見せなければ、俺が人買いに売っただの、黒魔術の生贄にしてるだの、好き勝手に噂するだろう。
言いたいやつには言わせておけばいいが、ゴシップネタを提供するのも不本意だ」

知らなかった。人の話題になっているなんて。さすが侯爵家。

「というわけで、お前にはせいぜいピンピンしてるところを見せてもらわなければ、俺が迷惑する」

そういうことならば。
「精一杯つとめます」

クラウスに恥をかかせたくないと、そう思った。
そう思う自分が意外でもあったけれど。