冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

画だけでも、見れば見るほど、ため息がこぼれるような素敵な部屋だ。
ぼんやり夢想したことがある、お姫様の部屋よりもはるかにロマンチックで上品で洗練された空間。

ほぅと見入っていると、コンコンと扉がノックされる音。
入ってきたのは、クラウスだった。慌てて立ち上がる。

「どうだ、気に入ったか?」

「わたしにはもったいなくて」
デザイン画を胸に抱くように応える。

クラウスは軽く眉を上げてみせると、「ちなみに明日はドレスのデザインの打ち合わせだ」と告げた。

「ドレスならもう足りています」
毎日どれを着ようか悩むくらいだ。

「舞踏会用のドレスだ」

「舞踏会?」
目を丸くして、おうむ返しに口にする。

「出席したことは?」

黙って首を振る。食べてゆくのがやっとの生活だった。
社交界デビューなど、夢のまた夢だ。

「・・・わたしのようなものが、出席していいのでしょうか?」