分からない・・・
思えば、自殺をはかったときのほうが、世界はよっぽど単純だった。
父を亡くし、生活のあてもなく、親族には望まぬ結婚を強要され、生きているのが辛く苦しかったから。
今はーーー
わけも分からないうちに、物質的には何ひとつ不自由ない身になり、結婚の話も立ち消えになった。
そして、自分がもっとも苦手とする類の人物と一緒に暮らしている。
幸せとも不幸とも言い難い。
死に場所を求めて領内をさまよっていたのが、ずいぶんと遠い昔の事のように感じられる。
午後建築士を呼んでいる、とフロイラがもっとも苦手な人物にして養い主であるクラウスが、前置きもなくそう言った。
朝の食事のテーブルだ。
「はい」
意図は不明だけれど、とりあえず返事をする。
「お前の部屋に手を入れさせる」
思えば、自殺をはかったときのほうが、世界はよっぽど単純だった。
父を亡くし、生活のあてもなく、親族には望まぬ結婚を強要され、生きているのが辛く苦しかったから。
今はーーー
わけも分からないうちに、物質的には何ひとつ不自由ない身になり、結婚の話も立ち消えになった。
そして、自分がもっとも苦手とする類の人物と一緒に暮らしている。
幸せとも不幸とも言い難い。
死に場所を求めて領内をさまよっていたのが、ずいぶんと遠い昔の事のように感じられる。
午後建築士を呼んでいる、とフロイラがもっとも苦手な人物にして養い主であるクラウスが、前置きもなくそう言った。
朝の食事のテーブルだ。
「はい」
意図は不明だけれど、とりあえず返事をする。
「お前の部屋に手を入れさせる」



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)