「以前にもお話ししたかと思いますが、幼い頃、湖畔地方でヴィンターハルター家のお嬢様と知り合ったので」

「お前も変わり者だな。男との結婚は死ぬほど嫌がって、いるかどうかも分からない女を追いかけてるのか」

「いたんです。本当に」
彼に抗弁するのは珍しいことだ。

クラウスはその言葉を流し、「なぜそんなに結婚が嫌だったんだ?」とそちらを問うてくる。

「・・・・・」

「人の口を割らせる方法ならいくつか知っている。試してやろうか?」

「い、いえ」
ぶんぶんと首を振る。冗談に聞こえない。

なら話せ、と畳みかけられる。

「・・・わけというのほどのーーーわたしは男の人が苦手で・・」

「父親と二人暮しだったんだろう?」
胡乱げな眼差しを向けてくる。

「父や、よく知っている学校の先生ですとか、小さな男の子なら平気なんですが・・・なんというか、支配的な人は・・・」
ぽつぽつと口にする。