冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

わずかばかりの土地に、数頭の牛と羊とヤギ。妻が育てる雌鶏と野菜畑で生活を支えるつつましい農家に、食い扶持にならない動物を飼うゆとりはないのだ。

それが世の条理ではあるが———
親に見捨てられ、人にうとまれる “毛色の違う” 存在。

「ただこの世に生み落とされたただけで、こいつに罪はないものをな」
誰ともなく、クラウスはつぶやく。

「へ・・ぁ・・」
農夫が間の抜けた声をだす。

かってやる、とその顔にクラウスは告げた。買うと飼うと両方の意味をこめた。

はおっていたマントをとり、小さな毛むくじゃらのかたまりを包んで抱き上げる。驚くほど軽かった。抱き上げられても、ほとんど身じろぎもしない。

「羊とヤギだからな、二匹分の値でどうだ」

痩せた仔の値としては過分なほどの金額を、リュカは農夫に渡した。

寝わらを敷いた粗末なバスケットに入れられ、クラウスのマントをかけられ、馬の背に揺られて、合いの仔はヴィンターハルター邸の門をくぐった。