「真理でしょうね。ですがなぜ急に?」

「新聞記事を、幸せな内容と不幸な内容に分けてみれば明らかだ。大衆紙でも経済紙でも、割合は同じようなものだろう」

リュカと同い年の主は、秀麗な面差しに皮肉めいた笑みを浮かべてみせる。

「幸とも不幸ともつかないことも、世の中にはあるのかもしれませんが」

リュカの言葉に、クラウスが片方の眉をつつっと上げる。

「ほう、たとえば?」
楽しんでいるのだ。家令との気のおけないやり取りを。

メイドたちが出入りの商人から聞いた話ですが、と前置きして。
「どこぞの農夫のところで、羊とヤギの合いの仔が生まれたそうなのです」

「あるのか、そんなことが?」
クラウスのしめした興味は、リュカの想像以上だった。

「生物学に詳しいわけではありませんが。種としては近しいわけですから、ホラ話とも言い切れないのではないかと」

手にした新聞から視線をはずし、こぶしをあごに当て、つかの間思考に沈んだクラウスだったが、すぐにすっと顔を上げた。

「その合いの仔とやらが生まれたのが、どこの農夫のところか調べておけ」