「定期的に人をやって手入れをさせてはいたが、久しく誰も住んでいないからな」

いま屋敷と庭園の修繕工事をさせているという。
なるべく往時の趣を残すようにしているとはいうが、屋敷も庭園もあの頃と同じではないだろう。

それは仕方がないことだし、それでもいい、とフロイラは思う。

これから、新しい想い出をそこに重ねてゆけばいいのだから。

フロイラは一度ならず、クラウスに「本当にわたしでいいのですか?」と聞いてしまったのだけれど。
彼ならば、どんな女性でも手に入れることができるのだから。

その度にクラウスは「お前しかいない」と返してくれる。
「闇の昏さを知らない者に、光の美しさなど分かりはしない」

「クラウス様・・・」

「フロー、お前は光だ。何よりも美しい」


クラウスはたまにだけれど、フロイラのことをまた「フロー」と呼んでくれるようになった。

あの場所だったら、いつかフロイラもクラウスを冗談で「お姉さま」と呼べるかもしれない。


すべてはそこから始まり、そこへ繋がり、そしてその先へと続いてゆくーーー


永遠の庭で。




【完】