冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

使用人用のキャリッジポーチではなく、正面玄関から邸に招じ入れられ、気後れしながらグレート・ホールの磨き上げられた床を踏む。

黒と白の大理石が、幾何学模様に敷き詰められた、精緻な意匠だ。
ホール奥の大階段を背に、家令のリュカ・クリストフが佇んでいた。

「お待ちしておりました。ミス・フロイラ」
胸に手を当て軽く頭をさげる。

スカートのすそをつまんでぎこちなくお辞儀を返す。
「お招きいただきまして・・・」

「使用人に頭をさげるのはおやめください」
リュカがぴしりと告げる。眼鏡の奥の深青の瞳が、品定めをするように自分に注がれている。

「あなたは今日から、ここに住まう方。私の主人格にあたるのですから」

そんなこと自分は一言も聞かされていない。

お部屋へご案内いたします。とリュカが背を向け、階段をのぼりはじめる。