「バカなっ!!」
リアネルが怒鳴る。顔面は、朱と蒼白の見苦しいまだら模様に染まっている。

「それが本当だとして、そんなことを誰が信じると・・・・」

「だから、真実などどうでもいい」
冷ややかにクラウスが告げる。

「世間はこのゴシップをどう思うか。貴殿のいう下賤のドブネズミは、自分たちを見下す貴族階級の裏の顔を暴いたネタが大好物だ。
ちなみに、圧力をかけて会社を潰そうと考えるのは時間の無駄だ。求める者がいるかぎり、会社は名を変えてまたゴシップ紙を出しつづける。
人の嗤い者になるようなことをご嫡男がされたと知ったら、バートフィールド公爵も家督を譲る相手を考え直すかもしれませんな」


「ふざけるなぁっ!」

もはや紳士たる矜持も、理性も教養もなにもなかった。凝り固まった選民意識を振りかざす、一匹の愚かな獣と化してつかみかかってくる。

クラウスはフロイラを腕に抱き、かばうように半身になる。

「貴様に、貴様のような下賤の者などに、わたしがっ、許されると思うのか、このわたしがあぁ・・・」