冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

「さあさ旦那様がお戻りになった時にお叱りをちょうだいしないように、しっかり気を引きしめて。花を絶やさないでね、百合の花粉はきちんと落として」
女中頭が自らを鼓舞するように、てきぱき指示を出している。


翌朝、更衣室(ドレッシングルーム)でドレス選びさえ億劫な自分を発見して、フロイラはうろたえた。

クラウス様がいると思って生活しましょう。
対応策として思いついたのは、それくらいだった。

一人ぼっちで朝食を終え、自室でお気に入りの詩の本を読み始めた。

『ーーー野路の果て 遠樹の枝に 明けの星を引き留め・・・』

パタンと本を閉じた。今はどんな美しい語も句も心に響かない。

裏庭でさえ、フロイラの心を完全には晴らしてくれなかった。

ルーシャ、わたしどうしてしまったのかしら・・・

小径をひとり歩きながら、心の中で呼びかける。

あなたのことを忘れたことはないのに・・・・あの方の、あなたの兄弟かもしれないひとの存在が、どんどん心の中で大きくなってゆくの。