冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

出立の日の朝、グレート・ホールで、フロイラと使用人一同で見送りをする。

誰もがどこか戸惑ったような表情を浮かべている。
主も家令もいない大きな邸は、さしずめ子どもだけで留守番をしている家のようなものだ。
開放感よりも、心細さが先に立つ。

フロイラが、執事代(アンダーバトラー)のジーヴスに手渡されたマントを、クラウスに着せかける。
漆黒のビロードに臙脂のシルクの裏打ちがされたマントをまとったクラウスの姿の立派さは言うまでもない。

クラウスはフロイラを見つめ、そして整列する使用人に「四日後に戻る。みなフロイラの言うことを聞き、留守をよろしく頼む」と告げた。

まるでフロイラが女主人かのようだ。


クラウスとリュカを乗せた馬車が見えなくなってしまうと、急に邸の中ががらんとしてしまったようだ。

戻ってくることは確かなのに、主を失った邸は広すぎた。