冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

フロイラの “庭遊び” にクラウスもときどき付き合ってくれるようになった。

あの夏の想い出を取り戻そうとするように、フロイラは花を摘んでアンナ・マリーにフロストフラワーを作ってもらった。ヒメスイバやスミレの花びらを砂糖漬けにしたものだ。
これをお茶に落としたり、ケーキに飾ったりして、ルーシャと楽しんだものだ。

背伸びしてルーシャと飲んでいたお茶が、クラウスとのアフタヌーンティーにも登場するようになった。

あの後も何度か、二人でリンゴを “収穫” した。
クラウスが弓矢でリンゴを落とし、ちょっと行儀が悪いけれどフロイラは上スカートをひろげて実を受け止めては、かごにおさめた。

「リンゴ農家で生活していけそうだな」

「まぁ」
思わずくすっとする。クラウスが冗談を口にするなんて。

フロイラ、とクラウスが何かに気づいたように顔に手を伸ばしてきた。

「ゴミが」とつぶやいて前髪のあたりに触れる。

木屑でも付いただろうか。じっと目をつぶる。