冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

「せっかく作ったんだ、使ってみるか」

クラウスが手を添えて、射方を教えてくれた。

なにせ的が近いものだから、フロイラもすぐに命中させることができた。
一つ二つと矢の当たったリンゴが落ちてくる。一つは地面に落ちるまえに、クラウスがすばやく受け止めた。

クラウスはリンゴをシャツの袖でこすると、一つフロイラにくれた。
二人でリンゴの木陰に腰をおろし、実をほおばった。

太陽の光をたっぷり吸いこんだ、甘酸っぱい味が口中に広がる。パイやジャムでは味わえない美味しさだ。

なんとも気持ちのいい日だった。空の高みをゆっくりと雲が流れ、陽はあたたかく、風はやさしい。


ボスン、と膝にいきなり物理的な重みを感じた。
視線を落とすか落とさないかのうちに、それがクラウスの頭だとは理解した。フロイラの膝に頭を乗せて、仰向けになっている。

なっ!?・・・な・・・

彼が自分の膝を枕に・・・? 気まぐれなのか、何か意味があるのかーーー