冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

「矢じりを釘にして、矢羽をつけるとより本物らしくなるんだが、まあこれくらいでいいだろう」

むろんフロイラに異論はない。

自分で作った弓矢をしげしげと手にとって、「こんなに小さかったんだな」とクラウスが漏らした。
「子どもの頃は、弓矢とジャックナイフがあれば、世界を手に入れた気持ちになった」

クラウスにも幼かった頃があるのだ。当たり前のことだけれど。

「お友達と遊んだりされたんですか」

「リュカと遊んだ。たいていのことはリュカが教えてくれた」

二人はそんなに幼い頃からの付き合いだったのか。
クラウスとリュカのつながりが、主従という関係を超えて深いことは誰の目にも明らかだ。それは年月のなせるものなのだろうか。


さて出来上がった弓矢を持ってリンゴの木の下まで行ってみると、二人ともしばし無言になった。

「跳びあがれば取れるんじゃないか。リュカなら手を伸ばしただけで、足りそうだな」

「・・・はい」

あの頃は、どんなに手を伸ばしても、木を揺すっても取れなかったのに。