冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

女学校でフロイラは暗唱を得意としていた。
憶えていた詩の一節を、以前クラウスと話していて口ずさんだところ、お気に召したようで、それからたびたび彼のために朗読をするようになった。

韻のうつくしい言葉にリズムのある詩を選んで、読みはじめる。

クラウスは目を閉じ、指でリズムをとるように椅子のひじをトントンと叩いている。

ご主人様のために、うつくしい声でさえずる。これこそ籠の鳥の務めーーー
でも、なぜだろう。この空間がこの時間が、自分は嫌ではないーーー


自覚しているし、アンナ・マリーにも言われたことだけれど、裏庭に行くようになってからというもの、フロイラはめっきり生き生きとしている。

瞳はかがやき、表情は豊かになり、よく笑い、しぜんと口数も増えた。
クラウスが苦々しく思いながらも、裏庭に行くのを禁じようとしないのは、そのへんに理由があってのことだろうか。

あの懐かしい想い出の庭にそっくりな場所が、あるのだ。
今にも草の上でピクニックをしている幼い自分とルーシャが姿を見せそうな。