冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

ふとあることに気づく。
「リュカ様は休暇を取られないんですか?」

「ーーー帰るところもございませんので」

「えっ! ご両親は・・・?」
彼はたしかクラウスと同い年と聞いていた。主人も家令もずいぶんと若い邸なのだ。

私は父親の顔を知りません、リュカは淡々と口にした。
「母は生活のために一人で働きに出て、私は祖母の元に預けられ育てられました。その母も祖母も亡くし、縁あってクラウス様に仕える身となりました。
最初は従者(パレット)から、こうして家令にまで取り立てていただきました」


「すみません、出すぎたことを聞いてしまって」
すっかり恐縮して詫びる。

いえ、と眼鏡のブリッジに指を当ててリュカははっきりと言う。
「こんなにも早くお仕えすべき方に巡り会えたこと、私はこの上ない幸運と思っております」

とっさにフロイラが感じたのは、なんと嫉妬だった。
彼の迷いのない言葉が羨ましい。