冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

「ずっと前からここにあるそうです。旦那様は前庭や温室と同じように、きちんと手入れするようにおっしゃっています」

「どなたか庭の由来を知っていそうな方はいないのかしら」

「うーん、ヒューゴさんなら何か知っているかもしれませんね。十年以上ここで働いているそうなので」
園丁は首をひねりながら答えた。

「その方は?」

「はてそういえば、ここ数日見かけませんね。リュカ様なら事情をご存知かと思いますが」

使用人の雇用形態は様々だ。
使用人棟に住みこみで働いている者、通いの者、週に何度かだけの契約の者。
それらすべてを取り仕切るのが、家令であるリュカの役目だ。


「園丁のヒューゴ、ですか。今は休暇を取らせています。妹の結婚式があるとのことで」

フロイラの問いに、即座に答えが返ってきた。

「そうでしたか」

クラウスは使用人にきちんと休暇を与えてくれるという、アンナ・マリーの言葉を思い出した。