冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

すみからすみまで歩いて、この目で確かめるつもりだった。そうせずにはいられない。

見れば見るほど、植えられている木や花の種類といい配置といい、小径ののびぐあいも温室のデザインも花壇や塀のレンガの色合いまでも、あの屋敷の庭に酷似している。

たっぷり小一時間歩き回って、フロイラはこの小庭はあの庭園を模して作られたものだろうと結論づけた。

あの庭園はレンガ塀と生垣で囲われていたが、特に必要もないのにこの小庭の一辺にも、それにみたてたようなレンガ塀が作られているからだ。

幹の太い木々や、古びてところによってはヒビも入ったレンガ塀、そこを覆うツタなどから、確かにクラウスのいうように、この庭はかなり昔に作られたものだと推察できた。

誰が、なんのためにーーー?


園丁のひとりをつかまえて聞いてみたが、ここで働いて三年ばかりで、何も知らないとのことだった。