冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

これも彼の一つの面だ。

父であるラインハート伯が、とにかく温厚そのもので、声を荒げることさえなかった人物だったせいだろうか。
男性には、温和か粗暴の二種類しかないように思ってしまっていた。

ひとは、物事は、そう単純ではないと、ようやくそんなことに考え至る。

我ながら現金なもので、翌日には熱も下がり起き上がれるようになった。

朝の光が再び祝福のように感じられる。日常が戻ってきたようで、ありがたい。

「おはよう、アンナ・マリー」
「おはようございます。ジーブスさん」
「おはようございます、リュカ様」

「おはようございます。フロイラ様」

「おはようございます。クラウス様」

「ああ」

いつもの朝と、いつもの彼。

10時に書斎にいるクラウスにお茶を出し、引き留められなかったのを幸い、足はすぐに裏庭に向かう。