冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

「うわ言みたいなことを口走ってないで、ベッドで休め」
ため息まじりにクラウスが告げる。

ときに優しさのほうが腕力より効力を発揮することがある。
フロイラはそれ以上、ごねることはできなくなった。

クラウスはフロイラをうながして立たせると、そのまま軽々と身体を抱き上げた。

「歩けます・・・」

いちおう口にはしたものの、下ろしてくれないだろうとは分かっていた。
そのまま自室のベッドまで連れ戻され、ベッドに横たえられた。
どころか、毛布をあごの下までかけてもらい、申し訳なさにかえって具合が悪くなりそうな心地がする。

主人に世話を焼いてもらうとは、ずいぶんと大切にされる愛玩動物(ペット)もいたものだ。

早く治せ、という彼の言葉に素直に「はい」と返事をした。

またクラウスのことが分からなくなってしまう。

自分が淹れた美味しくもないだろうお茶を、それでも毎日飲み続けてくれていた。
こうしてぐずぐずベッドに伏せっていても、皮肉ひとつ言うでもない。