冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~



「ク、クラウス様、」

ノックもそこそこに、ネグリジェ姿でころげるように自室に入ってきたフロイラに、クラウスはさすがに驚いたように目を見張った。

執務に使うデスクに向かい、ペンを手にしている。

「・・・なんの用だ」

「お願いです。裏の庭のことを教えてください。どうしてあの庭がここに・・・」

咎めは覚悟の上。クラウスの足元にすがるように、必死で言葉を並べる。

「・・・庭?」
クラウスの胡乱げな視線と声。

「裏の小庭です。あの、お姉さまと遊んだ屋敷の庭にそっくりなんです。花壇や植わっている木もレンガ塀も。どうして、どうして・・・?」
興奮して舌がもつれる。

知らん、クラウスの返事はそれだけだった。

「どうしてあの庭とそっくりな庭がここにあるんですか?」
言いながら、馬鹿げた問いかけだと自分でも思った。

「知るか。裏庭はずっと前からあそこにある。べつに俺が作らせたわけじゃない」