冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

ええ、とルーシャはうなずいた。

「たまに夜が明けるまえ、朝になるまえの時間に目が覚めてしまうことがあるの。ベッドを出て、カーテンをめくって庭を見ると、なんだか木も草も花も眠りにつつまれているような、そんな静かな時間があるの。朝の四時くらいだと思うわ」

そんなことを語るルーシャはひどく大人びて見えた。
フロイラにとって夜は眠るための時間でしかなかった。

「きっと昼間とはちがう庭があるわ」

「わたしもお姉さまといっしょに見てみたいわ」
その密やかな庭を。

「そうね、いつかきっといっしょに探検しましょう」

「そのときは、ここで待ち合わせね」

ふたりで瞳を輝かせて交わした、約束。


よみがえり、あふれ出す、いくつもの想い出ーーー