冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

親族に領地や財産を割譲することで、なんとか反対を封じ、庶子上がりと蔑まれながら、少年、クラウスは次期当主の座についた。

クラウスが次期当主に確定したのを見届けるように、母親である女性は死亡。
さらに先代も、三年ほど前に死去。

若くして侯爵の地位を継いだクラウスに、親族の対応は冷ややかだった。当主とは名目ばかりで一族の集まりからも爪弾きにした。彼が全てを失ったところで、再び爵位を “正しい血筋” の後継者に戻す心積りだった。

だがクラウスは事業の才を発揮し、またたく間に残った領地の生産力を向上させた。株や投機でさらに財を増やし、ついでに質実な性質で散財する趣味はない。

一方転がりこんできた財に浮かれた親族は、その多くが数年のうちに蕩尽しつくしてしまっていた。
クラウスはかつての領地まで取り戻しつつあるという。

そんなお家騒動より気になるのがーーー

「で、では先代には奥方様が二人いらして、一人ずつ子どもがいらしたのですね?」

架けかえられていた奥方の肖像画を思い出す。
走った後のように、息を苦しい。心臓が早鐘のように打って、痛いくらいだ。

「そういうことです」
リアネルはうなずく。

「もう一人の女の子は今どこに?」
胸の前で両の手を組み合わせる。