冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

「ああ、そのドレスをまとっていると、花の精と見まごうばかりだ。侯爵殿の見立てですか?」

「え、えぇ・・」

今日は水蜜桃色のオーガンジーのドレスを身につけていた。ひらひらと薄い
布地を幾重にもかさね、ウエストに黒いサッシュを巻いている。襟ぐりはデコルテを切りとるように、肩口をふくらませた袖からは腕がのびる。

「なるほど、侯爵殿が他の者に見せようとしないはずだ。ドレスよりいっそう輝く肌とあっては」

ひどく居心地が悪かった。

「お世辞が上手でいらっしゃいますね」

「あの舞踏会以来、あなたに心奪われた数多の男性がこぞって手紙や花を送っているようですよ。
かく言うわたしもその一人なのですが、その表情からするとあなたの手元には届いていないようですね」

眉を寄せて、小首をかしげる。
男性から自分に手紙? 初耳だ。