冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

ーーー綺麗ですね

温室でひとりバスケットを手に、入浴時に浮かべるためのバラを集めているときだ。
聞きなれない男性の声に、びっくりして振り向く。

「ーーー小公爵様?」

たしか舞踏会で会った、公爵家の嫡男、リアネル・バートフィールド。

「ああ、どうぞリアネルとお呼びください。ミス・フロイラ」
言いながらこちらへ近づいてくる。

「本当に美しい。目を奪われる」

「えぇ・・・ここのバラと蘭は本当に見事で」
戸惑いながらも、バスケットを花壇に置き、礼を失することのないように、スカートの裾を広げてお辞儀する。

いえ、とリアネルはこちらを見つめて言う。
「僕が言ったのは、あなたのことです」

この方はーーー

「小公爵様、今日はどうしてこちらへ・・・? クラウス様は外出中で・・」
そろそろ戻ってくる頃だろうか。

「そのようですね。応接室で待たせてもらっていたんですが、花の美しさに誘われて、こちらへ足が向きましてね」
てらいもなく口にする。