冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

結婚する気がないなら、どこか勤め口を見つけて、と思いはするけれどなかなか話を切り出すことはできなかった。

クラウス様は、わたしをここに置いてどうされるおつもりなのかしら・・・


追い出される気配はない。
どころか、部屋はフロイラのために新しく設えてもらったし、ドレスは増える一方だ。

「ここだけの話ですけど、フロイラ様がおいでになってから、旦那様の機嫌がよろしい日が増えまして。以前はわたしどもも、もっとピリピリしておりました」

アンナ・マリーにそんなことを打ち明けられると意志もくじけ、ずるずるとこの暮らしに身を埋めてしまっていた。

どこか張りぼてのような、脆さと背中合わせの毎日。

そこに楔を打ち込み、ひびを広げるように、その人は不意に現れたーーー