冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~

「旦那様に、親しくしていらっしゃる女性、ですか?」
一語一語区切るように、アンナ・マリーが繰り返す。

「えぇ・・・」

「わたしもお邸に奉公にあがって、日が浅いので・・・。知っている限りでは、旦那様が女性をお連れになったことはございません」

「そう・・」

アンナ・マリーの言葉に、どこかで安堵している自分がいる。

「フロイラ様、なぜそのようなーーー?」

アンナ・マリーの目がすばしこく動いている。

「クラウス様は女性がお嫌いと聞いたのに、ドレスのことに詳しかったりするものだから。どなたか親しい方がいるのかと思ったの」

「旦那様のお母様は何年も前に亡くなられたということですし、他に近しい女性がいるとは聞いたことが・・・」
フロイラの言葉に完全に納得したわけではないだろうけど、それ以上は詮索してこなかった。