これでいい。
心なしか満足げな声だ。

「あ、ありがとうございます」

クラウスにリボンが結べるとは。
それより、いまーーー名前を呼ばれた。
記憶をさらってみるけれど、きっと初めてだ。ずっと、「お前」や「おい」だった。

どうして彼の言動にいちいち浮いたり沈んだりするのだろう。仕えなければならない人だからか。

自室に下がって、しげしげと鏡を見ると、そのリボン結びはフロイラはもちろんメイドの誰の手よりも完璧な結び目だった。
解くのがもったいないくらいだ。

クラウスは女性の衣装にも詳しいし、器用にリボンが結べる。

女性が嫌いと聞いたけれど、あるいは過去に親しく交際していた女性がいたのだろうかーーー

そう思いついて、フロイラは自分でも意外なほど動揺を覚えた。

わたし・・・・どうしちゃったのかしら・・・