お前の肖像を描かせるのもいいな。
どんな風の吹き回しなのか、クラウスはしまいにそんなことまで言いだした。

「絵のモデルになったことは?」

「ありません」

退屈だぞ。特に子どもにとっては。
つまらなそうに、そう言った。

侯爵家ともなれば、子どもの頃から絵に描かれることもあるだろう。
飾っている絵の中には、幼いクラウスを見つけることはできなかった。

謎はすこし解けたのか、いや、いっそう深まったのか。

ルーシャとおぼしき少女の姿は、肖像画の中にはなかった。

理由は分からないが、クラウスはおそらく一族と断絶状態にある。
ヴィンターハルター一族にはプラチナブロンドの髪を持つ人がいる。

やはりルーシャは、ヴィンターハルター家の親族の一人と考えるのが自然だ。

いくら断絶しているといっても、ここにいればいつかはーーー
そう考えると希望がわいてくる。