「・・・クラウス様の肖像画はないのですか」

「まだ描かせていない。描く画家は苦労することになるだろうな。この髪の色を表現するのに」
赤と黒の色素が入り混じる髪にかるく手をやる。

「ご兄弟はいらっしゃらないのですか?」

いない、と返ってくる。

「一人だ。両親を早くに亡くしたから、十代で家督を継いだ」

天涯孤独。
自分と同じだ。

「兄弟が欲しいと思ったことはなかったが、お前を見ていると妹がいるのも悪くないかもな」

「そ、そうですか・・・」

褒められているのだろうか。
しかし・・・正直、クラウスのような兄はおっかなくてしょうがない。

慕わしく思うのは、やはり美しく賢く優しい姉のようなひとだ。

お姉さま・・・