「名を名乗れ。お前は何者だ?」
「フ、フロイラ・ラインハートと申します」
つっかえながら答える。彼の存在が、ただ怖ろしい。
クラウスが眉をひそめ、小首をかしげるのが、気配でつたわってくる。
「知らない名だな」
とつぶやいた。
それはそうだろう。
「たまたま喪服を着て、たまたまこの領内に迷い込み、たまたま溺れた・・・わけではないだろう。
なぜ、ここで自殺を図った?」
地獄の審判のほうがまだマシではないかと思うほど、クラウスの口調には容赦がない。
「———わたしは、ラインハート伯爵家の娘です」
観念して身の上を話しだす。それ以外になすすべはなかった。
「フ、フロイラ・ラインハートと申します」
つっかえながら答える。彼の存在が、ただ怖ろしい。
クラウスが眉をひそめ、小首をかしげるのが、気配でつたわってくる。
「知らない名だな」
とつぶやいた。
それはそうだろう。
「たまたま喪服を着て、たまたまこの領内に迷い込み、たまたま溺れた・・・わけではないだろう。
なぜ、ここで自殺を図った?」
地獄の審判のほうがまだマシではないかと思うほど、クラウスの口調には容赦がない。
「———わたしは、ラインハート伯爵家の娘です」
観念して身の上を話しだす。それ以外になすすべはなかった。



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)