「気を付けー‼礼‼ありがとうございました‼」

「「「ありがとうございました‼」」」
部活終わりのミーティング。
部長の挨拶のあとに約30人の声が続いた

そのとたん、私は即行で梨々香の手をつかみ
「帰ろう!」
と言った
私の気迫に、何かを感付いた梨々香は
「うん‼」
と、すぐに言ってくれた

♢~♢~♢~♢~♢
「...で、何があったの?」

私と梨々香はいつもの集合場所の梨々香の住むマンションの出入口にいた
いつもはここで、楽しい話をしてから帰るのだが、今は空気が重くなっていた

「......。昨日は、独りだったから、部活が終ったらすぐに独りで帰ったんだけど...」

「うん」
梨々香が優しくうなずいてくれる

「なんだか、急にゾッとして、後ろを振り返ったら......。遠矢がいた。」

「......っ‼」
梨々香の顔が悲しげに歪んだ

「でも、花梨一番最初に帰ったんでしょ?
なのに、徹は追い付いたの?」

「......走ってきたみたい」
そう言った私の顔は蒼白だった

「ごめんね。私は、火曜日は整体だったから...」

「ううん!梨々香は全然悪くないよ!
こうなることは予想してたし」
というのには、訳があった

遡ること、約一週間前
「ねえ、花梨。遠矢がまた告白するみたい」

「えっ⁉またっ⁉もう、八回目になるじゃん」
私達は、陸上記録会の帰りのバスに乗っていた
バスの中とわかってはいたが、思わず大きな声がでた

なぜなら、この八回目というのは、遠矢すが女子に告白した回数。
しかも、告白した相手が全員学校で、結構可愛いって言われている人

そして、告白しては、ことごとく振られていた


「あっ、もしかして、小百合?
後輩だけど、超可愛いしなぁ。
合ってる?」

「......。ごめん。まだ、言えない」
梨々香が気まずそうに私に言った。

その瞬間、私の心がゾワッとした
なんだか、瞬間的に告白される次の相手は私ではないのかと思った。

そもそも、いつも梨々香は相手がわかったら、すぐに私に教えてくれる。
なのに、今回は歯切れが悪い。

けど、そんなことはないと
強く、強くその考えたことを拒否している自分がいた

とりあえず、私は無理やり笑顔を作り、
「そっか!じゃあ、しゃべる気になったら
教えてね!
...そういえばさぁ、明日って........」
と、無理やり話を変えた


が、しかし。
私は、水曜日と金曜日は英会話を習っているので、
どうしても、部活を30分ほど早く、早退してしまう。

そうすると、帰るのが一緒の梨々香は独りなのかと思うかもしれないが、そんなことはない

変える方向、部活が一緒なのはあと二人いた。
その二人が、新谷と遠矢だった三年生を送る会を、私達二年生は企画していた
その話を、たまたまその男子二人に話したら、その日から四人で帰るようになった

今日は、火曜日だった。
だから、今日も四人で帰るのだろうと思っていたら、梨々香がいきなり
「今日は、二人で帰ろう!」
と言った

私はなんだかんだ、嫌な予感がして、即座に「うん」と言った

♢~♢~♢~♢~♢
二人で、無言で、はや歩きで、梨々香の住むマンションの出入口に着いたとき、
いきなり梨々香が口を拓いた。

「あのさ、こないだ遠矢がまた誰かに告るっていったじゃん?
それでさ、その、遠矢はその子を遊園地に誘おうとしてるみたいなんだけど....。
どう思う?」

「もしかしてさ、その一緒に遊園地に行って、告白するつもり?」

「......。そうみたい。で」

「あのさ‼もしかして、ホントに私の
うぬぼれかもしれないけどさ、
その相手って....私?」

私は、梨々香の話を遮り、言った。
それくらい、何かが私を焦らせていた。
そして、その原因を私はすでにほぼわかっていた
でも、どこかで否定シテホシカッタ

そんなことが瞬時に頭をよこぎった

梨々香は目を見開いて、驚いてから言った。
「......そうだよ。次の相手は花梨。」

なんだか、急に遠矢のことが気持ち悪く感じた
もう、二度と会いたくない。
しゃべりたくない。
そう思った

きっと、そう思ったのは、嫌な予感が一つ的中してしまったから。
そして、嫌な予感はまだ残っていて、その大きさは大きくなっている気がしたからだろう。