【完】蜂蜜色のヒーロー。



私が帰る前に、と話し出してしまった長谷川くんのそれを聞くしかできなくて、ひともいなくなった通りで、しばし見つめ合った。


心からのものなのか、そうじゃないのかはわからないから、余計辛かった。



「別れてからわかったんだ。妃莉のことが、俺すげぇ好きだった」


「……私は、大嫌い」


「わかってる。だけど俺はまだ、妃莉のことが好きだ」



がさごそとポケットからスマホを取り出して、手短に操作をした長谷川くんは、画面を私に見せた。


スクロールして、と言われて見せられたのは連絡先だった。言われてスライドさせて見れば、そこには女の子の名前がひとつもなかった。



「……騙す方法はいろいろあるよね」


「そうだね……妃莉、ごめんね。大好きだよ」


「……好きになることはないよ」