一向に帰る気も引く気もないらしい長谷川くんに、私の口から大きな溜め息が漏れた。 嫌だな……教室で路惟くんを待ってたらよかった。 「私、帰る。もう来ないで」 「……待った。今日はマジな話があるんだ、ちょっと聞いてほしい」 「嫌!」 「お願い」 長谷川くんの凛とした瞳に射すくめられて、私はびくっと固まった。手首を握られて、でもそれは振り払える力加減で。 なのにどうしても払えないのは、少しだけ切なそうな瞳をしていたから。 未練があるわけじゃないし、好きなわけでもないし、だけど振り払えない。