「妃莉、行こう」


「あ、路惟くん待って!」



ぐいっと手を引かれて、そのまま校門のほうへ半ば強引に引っ張られる。一ノ瀬先輩が後ろから、「妃莉ちゃん」と呼び止めたけど、それに応えさせてはもらえなかった。



だから、まさか───あの一ノ瀬先輩が私の過去と繋がってるなんて、このときは私も路惟くんも、思わなかったんだ。



「……妃莉はさ」


「うん? どしたの?」


「なんでそんなに可愛いの。だからあんな変な虫がつくんだろ、バカ」



少しご機嫌ななめ、みたい……言ってることはよくわからないけど、私の歩幅に合わせて歩いてくれている路惟くんは、むすっとしていた。



でもちゃんと、優しいんだ。


私に合わせてゆっくり歩いてくれているところも、さりげなく車道側歩いてくれているところも。



「妃莉、もう意地悪したり、ひとの前で抱きしめたりしねぇからさ、俺の彼女でいてね」


「……それはちょっと、淋しいかな」


「は?」