「路惟ー!」


「……ミサキ?」



ふっと振り返った御津くんが、ほんの少しだけ嬉しそうな顔をしたような気がして、胸がもやもやした。


なに? あのひとは、……あの綺麗なひとは誰なの?



なんで御津くんは、そんなに嬉しそうに柔らかく、笑ってるの……?


ミサキ、と呼ばれた可愛らしい女のひとは、キャリーバッグをごろごろ転がして近づくと、そのままがばっと抱きしめた。



しかもそれに、御津くんは応えて───つまり、抱きしめ返して。


短い挨拶をしたふたりの間には、私が邪魔という空気が漂っていた。