空と君とダイヤモンドと

「瑛梨奈大丈夫?」



トイレから戻ったあたしを架純が心配そうに見る。



「大丈夫。ってか、ワカじゃない!?」



たまたま8回の守備のイニングに入るところで。
ベンチからワカがマウンドに走っているところだった。



「ほんとだ!初登板じゃん!ほら、ユニ!」



架純があたしのカバンからユニフォームをだす。



「う、うん」



架純の勢いに押されながらもユニフォームを掲げてみる。



「この席さ、ワカがくれたんだぞ」


「え?」


「架純と瑛梨奈とみにいくって言ったらくれた。ここ、関係者席みたいだよ」


「どうりで…やたらいい席だと思った」



真正面からピッチャーが見える位置。



「俺らがここにいるってワカはわかってる。だからユニフォーム掲げてろ。ベンチに下がる瞬間まで」


「…うん」



ワカはあたしが来ることを知って嫌ではなかっただろうか。
あたしにこんな席を用意することをためらわなかっただろうか。