「あげる人決まった」


「お?好み?」


「つーか好きなやつ」



これだけは揺るがない。
決して揺るがない。俺の好きなやつ。



「へー!好きなやついんだ!」


「まぁ、な」



叶わない恋なのに忘れられない。
一つの想い。
もうすぐさよならしようとしてる一つの気持ち。
でも、きっと忘れないひとつ気持ち。



「行くぞ」



俺らの番になったから俺と椎名はステージから降りて、花道を歩く。
まずは自分のボードをもってくれてるファンへ捧げる。



「ありがとうございます!」



なんて嬉しそうに言われると、こっちまで心が暖かくなる。



「ありがとう!」



椎名の方を見れば多分彼女だろう。
ボールを渡した椎名も嬉しそうだった。


…そして、俺は。



「わっ!」



瑛梨奈にボールを渡すとすっごいびっくりした顔をしてる。

ここで何かを話すわけにはいかないので、手を振ってそこから離れる。
こんな場所。
こんか瑛梨奈とろくに話せない場所好きじゃない。