「ワカ、良基お待たせ」



塁くんが2人の前にあたしを押し出す。



「大丈夫ですよ。な?」


「はい」



2人とも塁くんに笑ってる。
ワカはどこか不満そうだけど。

最近は塁くんのことを考えているあたしに心底不満そうな顔をする。
まぁ、好きな人が彼氏のことを考えてるところなんかにいたくないのかもしらないけど。
だったら今だって良基だけがいればいいんだから帰ればいいのに、ワカは絶対に帰らない。



「じゃあね。就活頑張って」


「うん。またね」



塁くんに手を振って2人と一緒に改札をくぐる。



「俺、来年からここが最寄り駅になるんだなー」



良基が駅全体を見回す。



「気が早いっつーの。あれ、瑛梨奈そんなんつけてたっけ」



あたしのカバンにあるお守りに触れる。



「これさっき塁くんにもらったんだー」


「ふーん。よかったな」



また不機嫌そうに声が低くなる。


でも、仕方ないじゃない。
あたしの彼氏はどうしても塁くんなんだもん。
あの時ワカがあたしを手放してなければ、あたしだってワカといたはずだったのに。
いま、あたしは塁くんと歩もうとしてるのだから、何もできないよ。