「おっ、動いた」



俺らが乗って程なくしてバスが動き出す。



「すごいね。みんな手振ってくれてるよ」



いつの間にか隣にきていたらしい瑛梨奈がいた。



「何、感動してんだよ」


「自分だって感動してるくせに」


「まぁな」


こんなん感動しないやついんのかよ。
高校生の時、秋の大会で優勝したことはあったけど、流石にパレードはなかったから。



「あたしをここに連れてきてくれてありがとう」


「え?」


「ワカがいたから優勝できたし、ここにこうしていられるから」



瑛梨奈の言葉にちょっと泣きそうになっている自分がいた。
泣いてるところなんて見せたくなくて、瑛梨奈とは逆の方向をみて手を振っていく。


でも、言わなきゃ。
そうじゃないって。



「優勝は瑛梨奈のおかげでもあるだろ」



泣きそうなのをこらえながら言う。



「ふふ。ありがとう。マネージャー冥利につきます」



瑛梨奈の目にも光るものがあって、やっぱりこいつが傍にいて欲しいなんてもう叶わないことを願う。